「防災備蓄をしなきゃ」と思っても、結局うちは何をいくつ買えばいいのかが分からず、何年も止まっていませんか。備蓄の数字は、実は家族の人数と日数を決めれば全部機械的に出ます。この記事はその計算を代わりにやる計算機と、数字の根拠、そろえる順番、置き場所と費用の目安までを1ページにまとめた「備えの起点」です。
結論:必要量は「1人1日あたり 水3L・食事3食・トイレ5回」×人数×日数。最低3日分、推奨は1週間分(内閣府・農林水産省の指針)。大人2人+子ども1人の1週間なら、水63L(2Lペット32本=6箱)・食事63食・非常用トイレ105回分・カセットボンベ約6本。まず3日分を今週そろえ、1週間分へ買い足すのが現実的な順序です。
まず計算する
出た数字のうち、水・トイレ・食事の3つが最優先です。この3つは代用が利かず、尽きる順番も速いからです。カセットボンベ・トイレットペーパーはそのあと、乳幼児・ペットの分は「大人の計算とは別枠」で必ず上乗せします。
数字の根拠:なぜ「3L・3食・5回」なのか
計算機の係数は、思いつきの数字ではなく公的な指針の目安です。根拠を知っておくと、自分の家の事情に合わせて増減する判断ができます。
| 項目 |
1人1日の目安 |
根拠・補足 |
| 飲料水 |
3L |
内閣府・農林水産省の備蓄指針。飲用+調理用。生活用水(トイレ・洗い物)は含まない |
| 食事 |
3食 |
同上。子どもは量が少なくても食数は同じに数えるのが安全側 |
| 非常用トイレ |
5回 |
内閣府「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」などで用いられる目安 |
| トイレットペーパー |
約1ロール/週 |
経済産業省が家庭に「1か月分(1人4ロール)の備蓄」を呼びかけ |
| カセットボンベ |
世帯で0.5〜1本 |
1本=強火で約60分。湯沸かし中心かしっかり調理かで倍近く変わる(推定値) |
「最低3日・推奨1週間」の意味
3日は、人命救助が優先される発災直後に行政の支援が家庭まで届きにくい期間の目安です。1週間は、大規模災害(南海トラフ地震などの想定)で物流の回復に時間がかかり、支援物資が行き渡らない可能性が指摘されている期間です。3日分で「生き延びる」、1週間分で「普通に近い生活を保つ」と考えると、2段階の意味が腑に落ちます。
水の3Lは「飲む量」ではない
成人が1日に飲む水はおよそ1.2〜1.5Lで、残りはアルファ米を戻す・フリーズドライを溶く・薬を飲む・口をゆすぐといった用途です。暑い時期や乳幼児・高齢者がいる家庭、持病で水分制限や服薬の多い人がいる場合は、3Lを下限と考えて増やしてください。
そろえる順番:優先順位は「尽きる速さ」で決める
一度に全部そろえようとすると、金額の大きさに気後れして結局何も買わない、が最悪のパターンです。尽きる順に買うのが正解です。
第1優先:非常用トイレ
断水や排水管の損傷で、トイレは発災から数時間で使えなくなります。食料より先に問題になるのに、備蓄率はもっとも低い盲点です。凝固剤タイプは10〜15年保存できるので、買ったら管理の手間はほぼゼロ。家族4人なら最初の1箱は100回分が目安です(詳しくは非常用トイレの必要数と選び方)。
第2優先:水
人は食べなくても数日耐えられますが、水はそうはいきません。しかも水の備蓄は「1人9L(3日)」と覚えるだけで計算が終わる、いちばん簡単な項目です。長期保存水にこだわらず、普段のペットボトル水をケースで多めに置くだけでも成立します(保存水の必要量と選び方)。
第3優先:食料
主食(アルファ米・パックご飯)、おかず(缶詰・レトルト)、そのまま食べられるもの(栄養補助食品・菓子)の3層で、食数をそろえます。全部を5年保存の非常食にする必要はなく、普段食べるものを多めに回すローリングストックと組み合わせるとコストが下がります(非常食の必要量と3層の組み立て)。
第4優先:熱源と灯り
温かい食事はカセットコンロがあれば出せます。本体1台+ボンベ1ケース(12本前後)で1週間分に余裕が出ます(カセットボンベの必要本数)。停電の灯りと情報源(ランタン・モバイルバッテリー・ラジオ)は停電に備える灯りと電源で計算しています。
別枠:乳幼児・ペット・高齢の親
これらは代替が利かない(銘柄・サイズ・療法食)ため、大人の計算に含めず別に上乗せします。赤ちゃんがいる家の備蓄、ペットの防災備蓄、離れて暮らす親の防災で個別に扱っています。
家族構成別の早見表(1週間分)
計算機を使わずにざっくり把握したい人向けに、代表的な構成で1週間分を出しておきます。
| 家族構成 |
水 |
食事 |
非常用トイレ |
ボンベ(目安) |
| 1人暮らし |
21L(2L×11本=2箱) |
21食 |
35回分 |
4本 |
| 大人2人 |
42L(21本=4箱) |
42食 |
70回分 |
5本 |
| 大人2人+子1人 |
63L(32本=6箱) |
63食 |
105回分 |
6本 |
| 大人2人+子2人 |
84L(42本=7箱) |
84食 |
140回分 |
7本 |
| 大人2人+子2人+乳児1人 |
105L(53本=9箱) |
84食+ミルク42本 |
175回分 |
7本 |
※3日分はこの表のおよそ4割強です(例:大人2人+子2人なら水36L・36食・60回分)。
「買う単位」に直すと迷わない
必要量が「84L」と出ても、売り場で84Lは買えません。買う単位に直して覚えるのがコツです。
- 水:2Lペット6本入り=12L=1人4日分。家族4人の1週間なら7箱
- 非常用トイレ:100回分=家族4人の5日分。1週間なら1箱半、2箱あれば余裕
- アルファ米:1食=1袋。12食セットや50食入りの箱で食数を合わせる
- カセットボンベ:3本パックは3日分、12本ケースは1週間分(世帯4人の目安)
- トイレットペーパー:12ロール1パック=家族4人の3週間分。普段の在庫に1パック上乗せでほぼ足りる
最初の1週間にそろえる「基本セット」
計算の手間を省きたい人のための、家族4人・3日分の実用的な組み合わせです。
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- アイリスオーヤマ 保存水 2L×6本(5年保存)「買って忘れる」ができる。3日分なら3箱Amazonで見る
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費用の目安:全部そろえていくらか
価格は変動するので幅で示します。家族4人・3日分の基本セットなら、合計でおよそ2万〜3万円が目安です。
| 項目 |
3日分の目安額 |
補足 |
| 水(36L・3箱) |
2,000〜4,000円 |
長期保存水はやや高く、普通のミネラルウォーターなら下限寄り |
| 食事(36食) |
8,000〜15,000円 |
全部アルファ米なら上限寄り。缶詰・レトルト混在で下がる |
| 非常用トイレ(100回分1箱) |
4,000〜7,000円 |
50回分×2箱より100回分1箱が割安 |
| カセットコンロ+ボンベ12本 |
5,000〜8,000円 |
コンロ本体は3,000円前後から |
1週間分に拡張するときは、水と食事を倍にするだけでトイレとボンベは足りることが多く、追加は1万〜1万5千円程度で済みます。「一度に3万円」ではなく「毎月5,000円を半年」でも、半年後には1週間分がそろいます。
置き場所:分散が正解
家族4人・1週間分の水は84L(2Lペット7箱)、意外とかさばります。1か所にまとめず分けて置くのが基本です。
- キッチン周りにローリングストックの食品と水1〜2箱(日常で回す分)
- 寝室や廊下のクローゼットに長期保存の非常食・水・トイレ(開かずの箱)
- 車に500mlの水1ケースと携帯トイレ・菓子(車に積む防災グッズ)
- 玄関近くに持ち出し用のリュック(防災リュックの正解)
1か所が家具の転倒や浸水で使えなくなっても全滅しないのが分散の価値です。そもそも家具が倒れない対策(家具の転倒防止)は、備蓄より先にやる価値があります。
買って終わりにしない:年4回の点検日
備蓄の最大の敵は災害ではなく賞味期限切れです。5年保存の非常食も、買った日を忘れれば6年目に全滅します。
- 長期保存品(アルファ米・保存水・ボンベ)は箱に購入年月を油性ペンで書く
- 普段の食品で回す分はローリングストックに任せ、特別な点検をなくす
- 点検日は年4回、季節の節目で固定する(防災の日に備蓄を見直す)
点検の中身は「賞味期限の確認」「家族の人数・年齢の変化(子どもの成長で食数や必要量が変わる)」「ボンベ・電池の使用期限」の3つで十分です。
マンション・在宅避難を前提にする
多くの都市部の家庭では、建物が無事なら避難所ではなく自宅で過ごす「在宅避難」が現実的な選択になります。在宅避難は避難所の物資をあてにできないので、この記事の備蓄量はすべて「自宅で過ごす前提」で計算しています。高層階ではエレベーター停止で水の運搬が重労働になるため、水は多めに、置き場所は分散を強く推奨します(マンションの在宅避難)。
地震直後の初動(火元・出口・家族の安否・水の確保)は地震のあと最初の1時間にやることにまとめています。備蓄は「その1時間を越えたあと」に効く備えです。
よくある質問
計算機の「子ども」は何歳から大人と同じ扱いですか?
水とトイレは年齢で分けず、全員3L・5回で数えてください(指針も年齢区分はありません)。食事は小学生以上なら大人と同じ食数で数え、量の差は「おかずの1食を軽めにする」程度で調整するのが安全側です。乳幼児はミルク・離乳食・おむつが別枠なので「乳幼児」に入れてください。
冷蔵庫や普段の食品棚の中身は数えに入れていい?
発災初日は冷蔵庫・冷凍庫の食材を先に消費するのが定石なので、実質的には1日分の余裕になります。ただし停電時期や被害状況で当てにできないこともあるため、備蓄は冷蔵庫の中身を数えずに計算し、冷蔵庫分は「余裕」と考えてください。
生活用水(トイレ・洗い物)はどれくらい要りますか?
飲料水3Lとは別に、1人1日10〜20Lあると洗面・手洗い・簡単な洗い物に困りません。ただし大量の備蓄は非現実的なので、風呂の残り湯を翌日まで抜かない習慣と、給水車から運ぶための給水袋・ウォータータンクの用意で代えるのが現実的です。トイレは水を使わない凝固剤タイプで対応します。
全部を5年保存の非常食にしないとだめですか?
必要ありません。むしろ全部を長期保存品にすると割高で、味に飽きやすく、入れ替え時に大量廃棄になりがちです。アルファ米と保存水を「最後の砦」として最小限持ち、残りは普段食べる缶詰・レトルト・乾麺を多めに回すローリングストックが、コストも管理も楽です。
一人暮らしでも1週間分必要ですか?
必要量は少ない(水21L・21食・トイレ35回分)ので、むしろ一人暮らしのほうが1週間分をそろえやすいです。置き場所がない場合は、水はケース1箱を床に置き、食事は普段のレトルト・カップ麺を多めに持つだけで実質1週間分になります。
高齢の親と同居しています。増やす項目は?
水(服薬が多い)、常備薬・お薬手帳のコピー、入れ歯洗浄剤やとろみ剤など介護用品、そしてやわらかく食べやすい非常食(おかゆ・レトルトのやわらか食)です。嚥下に不安がある場合、通常のアルファ米は硬さが合わないことがあります。詳しくは離れて暮らす親の防災もご覧ください。
2週間分まで備えるべきですか?
離島・山間部・大規模マンションの高層階など、物流や給水の復旧が遅れやすい条件なら価値があります。一般的な住宅地なら、1週間分を確実にそろえて点検を続けるほうが、2週間分を一度買って放置するより確実です。計算機の「2週間分」は、その判断の材料として使ってください。
夏と冬で備蓄は変わりますか?
変わります。夏は水を多めに(熱中症対策で3Lを超える消費が普通)、冷却グッズと停電時の暑さ対策。冬はカセットボンベの消費が増え(温かい飲み物・調理が増える)、低温で火力が落ちるのでパワーガス系のボンベと防寒具を足します。
出典・参考
- 内閣府 防災情報のページ「災害に対するご家庭での備え」(最低3日分・推奨1週間分、水1人1日3Lの目安)
- 農林水産省「災害時に備えた食品ストックガイド」(食品の備蓄量・ローリングストックの考え方)
- 内閣府「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」(トイレ1人1日5回の目安)
- 経済産業省「トイレットペーパーの備蓄」の呼びかけ(1か月分の備蓄推奨)
- 各製品の保存期間・燃焼時間はメーカー公表値。価格帯は2026年10月時点の一般的な目安で、変動します
備蓄は「一気に完璧」より、今日3日分の数字を1つ決めて、次の買い物に足すのが正解です。上の計算機で出た水の箱数だけでも、今週のカートに入れてください。